ニュースの概要
計測機器大手のHexagonが、Baker Hughesの傘下にあった産業用非破壊検査の大手Waygate Technologiesの買収を終えた。Waygateは、部品を壊さずに内部を撮影する産業用CT、現場で使えるX線撮影、超音波で傷を探す探傷、細い管の奥まで覗く遠隔目視検査などを手がける。Hexagonはこれまで、部品の寸法や形を精密に測る三次元計測と、製造向けソフトウェアを強みとしてきた。両社が一つになることで、外形の正確さと内部の健全性を同じ枠組みで確かめる体制が整う。検査の対象は航空宇宙、エネルギー、自動車など、故障が許されない分野に広がる。
引用元: Hexagon、Waygate Technologiesの買収を完了し、非破壊検査事業を拡大(Quality Magazine)
分析・見解
寸法を測る会社が、内部の欠陥も見るようになる
品質検査には大きく二つの問いがある。一つは「図面どおりの形か」。もう一つは「中に傷や空洞がないか」である。Hexagonは前者の代表格で、三次元測定機や計測ソフトで知られる。Waygateは後者の代表格で、産業用CTや超音波探傷を持つ。これまで両者は別々の機械、別々のソフト、別々の担当者で動くことが多かった。今回の買収は、その壁を事業の単位で取り払う動きだといえる。
産業用CT(=部品をX線で輪切りにして三次元データにする装置)は、まさに橋渡し役になる。内部の空洞を見つけながら、同じデータから寸法も測れるからだ。
金属3Dプリントと電池が、検査需要を押し上げる
追い風になるのは、内部が複雑な部品の増加である。金属3Dプリンターで作る部品は、外から見えない内部の気孔が強度を左右する。電気自動車の電池も、内部の電極のずれや異物が発火につながり得る。こうした部品は、抜き取りで切断して調べる方法では追いつかない。壊さずに全数を見たいという要求が強まっている。
航空機エンジンや発電設備でも事情は同じで、定期点検の現場にそのまま持ち込めるX線や遠隔目視検査の価値は高い。Baker Hughesはエネルギー分野の企業であり、Waygateの顧客基盤にもその色が濃い。
同業他社との比較でわかる、統合の狙い
計測と検査の統合は、今回が初めてではない。ZEISSは産業用CTと光学計測を自社で抱え、Nikonも計測とCTを組み合わせて売っている。Hexagonは、これらに対抗する足場を一気に買い取った形になる。
ただし、独自の見方をひとつ挙げたい。本当の勝負どころは装置ではなく、データの持ち方にある。CTの画像と測定の数値が同じソフトで扱えれば、「この傷は許容範囲か」を自動で判定する道が開く。逆に、装置を並べただけで終われば、買収の効果は小さい。
統合の成否を分けるのは現場への落とし込み
課題は残る。非破壊検査は資格や規格の世界で、技術者の認定や顧客ごとの承認手順が細かい。装置の使い方を変えれば、承認をやり直す必要が出る場合もある。製品の入れ替えを急げば、既存顧客の信頼を損なうおそれがある。今後は、まず新しい装置を増やすより、既存のソフトで両方のデータを読めるようにする地味な作業が先行するだろう。
ビジネスへの影響
検査工程を一社で組む選択肢が現実になる
製造業の品質担当者にとって、検査機器の調達先が減る可能性がある。寸法測定、内部検査、報告書づくりを別々の会社から買うと、データの形式がばらばらになり、つなぎ込みの手間が毎回かかる。一社に集約できれば、保守契約や教育の窓口も一本化できる。ただし、一社に頼るほど、価格交渉の力は弱まる。更新時期を見据えて、他社製品とデータをやり取りできるかを今のうちに確認しておきたい。
中小の部品メーカーが今月からできる準備
大きな設備投資をしなくても、できることはある。まず、自社の不良の原因が外形にあるのか、内部にあるのかを過去の記録から数えてみる。内部の不具合が多いなら、外部の検査サービスを試験的に使い、費用対効果を比べればよい。
次に、検査結果を紙や表計算の別ファイルで残している場合は、部品番号と測定値を紐づける習慣をつける。将来、計測と検査のソフトが統合されたときに、過去のデータが資産として使えるようになる。
最後に、取引先から内部検査の要求が来る前に、見積もりの目安を持っておくこと。航空や電池の分野では、その要求は年々厳しくなっている。
