このページはPR・広告を含みます

NDT INSPECTION REPORT

ブログ|業界コラム

超音波センサーのレンズにねじ山状の溝を刻み、半導体の内部欠陥を鮮明に捉える

超音波センサーのレンズにねじ山状の溝を刻み、半導体の内部欠陥を鮮明に捉えるのニュース解説イメージ

本ページは公開情報を整理した業界レポートであり、特定の機器メーカー・検査事業者の推奨ではありません。

ニュースの概要

韓国の大邱慶北科学技術院(DGIST)の研究チームが、半導体の内部を調べる超音波センサーの新方式を発表した。従来のセンサーは、レンズの内部で超音波が何度も跳ね返り、画像に余計な影が写り込む弱点があった。研究チームはレンズの側面に斜めのねじ山状の溝を刻み、横へ向かう超音波をさまざまな方向に散らすことで、端に集中して生じるノイズを抑えた。車載用パワー半導体モジュールでの実証では、従来より微細な構造や欠陥が見分けやすくなったという。パッケージを壊さずに中身を調べる非破壊検査の精度を、センサーの形状を変えるだけで引き上げた点が特徴である。

引用元: DGIST、ねじ山構造レンズで半導体内部の微細欠陥を高精度に検出する超音波センサーを開発(eDaily; The Herald Business)

分析・見解

画像がぼやける原因はレンズ内部の「反響」にある

超音波検査は、レンズから送り出した音の波が対象の内部で跳ね返る様子を読み取り、画像にする方法である。ところがレンズ自体にも音は広がる。側面に当たった波は壁で反射し、レンズの中を行き来して、本来の信号の後ろに偽物の信号を重ねてしまう。

風呂場で声が響いて聞き取りにくくなるのと似ている。壁が平らだと反響は一方向に揃い、はっきりした「こだま」になる。こだまが画像上では輪郭の縁に出る筋やにじみとなり、数十マイクロメートル(髪の毛の太さの数分の一)級の隙間やひび割れを隠してしまう。

壁を荒らして反響を散らす発想の転換

今回の工夫は、ノイズを電子回路や画像処理で後から消すのではなく、発生源のレンズ形状で減らした点にある。側面に斜めのねじ山状の溝を刻むと、壁に当たった波は一方向に戻らず、さまざまな角度へ飛び散る。音が散れば、ある一点に重なって強くなることがない。

音響設計では、コンサートホールの壁に凹凸をつけて反響を和らげる手法が昔からある。それを超小型のセンサーレンズに持ち込んだと考えると分かりやすい。新しい物理を見つけたというより、成熟した考え方を新しい場所に適用した成果である。そのぶん量産への移行は比較的現実的だと見られる。

車載パワー半導体で実証された意味

実証の舞台が車載用のパワー半導体モジュールだった点は重要である。電気自動車のインバーター(=直流を交流に変える装置)に使われる部品で、大電流が流れる。内部の接合部にごく小さな空洞や剥離があると、熱がこもり、数年後の故障につながりやすい。

しかも近年は、炭化ケイ素(SiC)を使った素子や、チップを積み重ねる構造が広がり、内部は一段と入り組んでいる。外から見えない欠陥をどう探すかが、品質保証の難所になっている。X線は軽い材料に強い反面、薄い剥離は写りにくい。超音波は界面の浮きを捉えやすく、補完関係にある。

実用化に向けて残る検証項目

もちろん課題もある。溝の角度や深さは、使う周波数や材料ごとに最適値が変わるはずだ。溝を刻む加工費や、長期使用での摩耗、検査速度への影響も確かめる必要がある。研究室の結果が工場のラインで再現されるかが、次の分かれ目になる。

とはいえ、既存の装置のうちセンサー部品を差し替えるだけで改善できる可能性があるなら、導入の障壁は低い。今後は車載に限らず、AI向けの積層メモリーなど、薄く重ねた構造の検査にも波及しうる。

ビジネスへの影響

検査工程の見直しで歩留まりと信頼性が変わる

半導体や電子部品のメーカーにとって、検査の精度は不良品の流出を防ぐ最後の砦である。微細な欠陥を見逃せば、リコールや保証費用という大きな損失に直結する。逆に過剰に不良と判定すれば、良品を捨てることになり歩留まりが落ちる。画像がくっきりすれば、この両方の誤判定が減る。

まず自社の検査で、どの欠陥がどの程度見えていないのかを棚卸ししておきたい。そのうえで、センサー部品の交換で改善できる余地があるかを検査装置メーカーに問い合わせるとよい。

検査装置と部材の取引条件が動く可能性

新方式が普及すれば、検査装置メーカーは高性能センサーを差別化の材料にする。装置を買い替えるのか、センサーだけ更新するのかで投資額は大きく違う。購買担当者は、見積もりの際に交換式の構成が可能かを確認項目に加えるとよい。

特許の動向も注視したい。形状に関する工夫は他社が模倣しやすく、権利関係が整理されるまで調達先が限られる恐れがある。

品質を数字で示せる企業が選ばれる時代へ

自動車メーカーは、部品の長期信頼性への要求を年々厳しくしている。検査の精度が上がれば、どこまで確認して出荷したかを顧客に示しやすくなる。これは価格以外での競争力になる。

なお、中小の部品メーカーが自前で最先端の検査機を持つのは難しい。外部の検査サービスや共同利用施設を使い、重要ロットだけ高精度で確認するという現実的な選び方も有効である。

関連記事

本サイトは非破壊検査産業を公開情報から整理したものであり、個別の検査結果・判定や安全判断に関する助言ではありません。検査方法・資格・法令の適用は基準原文・所管官庁・有資格者にご確認ください。