ニュースの概要
韓国標準科学研究院(KRISS)が、危険な環境でも使える超音波センサーを開発した。高温の配管、毒性ガスが漂う場所、水中の構造物などは、検査用の探触子(=超音波を出し入れする端子)を直接取り付けにくい。新しいセンサーは、円筒状の導波路(=波を導く棒や管)を間にはさみ、探触子を危険な表面から離したまま検査できる。導波路の中ではねじるような振動を起こし、検査対象の表面に均一に伝える。これにより、どの方向にある欠陥も見つけやすくなる。試験では方向ごとのむらが小さく、均一性は約95%だった。従来の分割型の構成と比べ、信号の振幅は13.7倍に達したという。
引用元: KRISS、危険環境の検査盲点を減らす遠隔型超音波センサーを開発(ASNT Materials Evaluation)
分析・見解
探触子を遠ざけるという発想の単純さと強さ
超音波検査は、対象に探触子を押し当てて音を送り、返ってくる反響で傷を探す方法である。ただし探触子は電子部品であり、高温や薬品に弱い。多くの現場では、設備を止めて冷やし、足場を組み、人が近づくという手間をかけてきた。今回の研究は、この前提を逆にした。探触子は安全な場所に置き、音だけを導波路で運ぶ。考え方は単純だが、現場の制約をそのまま解く力がある。
ねじり振動が全方向の検出に効く理由
超音波には、押し引きする波のほかに、ねじる波がある。ねじり波は管の断面全体に同じ向きで広がりやすく、特定の方向だけが強くなる癖が出にくい。従来は、導波路を複数の部品に分けて配置する方式が多かった。この方式では、つなぎ目の向きによって信号が強い方向と弱い方向が生まれ、欠陥の見落としにつながる。今回の方向均一性約95%という数字は、見えにくい向きを大幅に減らしたことを示す。信号が13.7倍になった点も重要である。現場では雑音が大きく、信号が弱いと判定が揺れるからだ。
過去の遠隔検査技術と比べた位置づけ
高温配管の検査では、これまでにも高温用の特殊な探触子や、冷却水を流すアタッチメントが使われてきた。水中ではカメラ付きの小型機が主役である。ただしカメラは表面しか見えず、内部の欠陥には弱い。冷却型の探触子は構造が複雑で、故障すれば危険な場所に再び人が入ることになる。導波路方式は、危険な側に電子部品を置かないため、この故障リスクを根本から減らせる。一方で、導波路自体の耐久性、対象との接触のさせ方、長さによる信号の減衰は残る課題である。
実用化までに確かめるべきこと
論文や試験の数字は、整った条件での結果である。実際の配管は、さびや保温材、振動で状態が一定しない。長期間つけっぱなしにした場合の性能維持、校正(=測定値を正しく合わせる作業)の手順、規格上の認定が次の関門になる。規格に適合しなければ、検査結果を保全の根拠として使えない。研究成果が現場の標準手順になるまでには、数年単位の検証が必要になるだろう。
ビジネスへの影響
検査のために設備を止める回数を減らせる可能性
化学プラント、発電所、製鉄所では、検査のための停止が大きな損失になる。探触子を危険な場所から離せるなら、稼働中の検査や、冷却を待たない検査の範囲が広がる。足場の設置や立ち入り許可の手続きも減る。年に数回の定期修理に頼る検査から、常設して継続的に監視する方式へ移る足がかりになる。ただし、これは技術が実証された後の話であり、現時点で導入計画に織り込むのは早い。
検討を始める企業が今できる準備
意思決定者は、まず自社設備のうち、検査が難しい箇所を洗い出すとよい。高温、毒性、水中、狭所のどれが理由で検査が先送りになっているかを整理する。次に、過去の検査記録を見て、見落としや再検査の費用を数字にしておく。この数字があれば、新技術の導入効果を比べやすい。保全を委託している検査会社に、導波路方式の動向を尋ねるのも有効である。サンプル提供や共同試験の機会が出たときに、すぐ手を挙げられる。
費用の見方と見落としやすい注意点
新しいセンサーは、本体価格だけで判断しないほうがよい。人が危険な場所に入る回数が減れば、安全対策費と保険料、事故のリスクも下がる。反面、導波路は消耗品になりうるため、交換の頻度と費用を試験で確かめる必要がある。検査結果の判定に使う基準を、社内と取引先の両方で合意しておくことも欠かせない。
